年俸制とは、成果主義に基づいて、賃金を
年単位で決定する制度です。
社員が最初の年に
目標を設定し、年度末等に上
司等が達成度を評価して、その結果により
翌年の年間給与を取り決め、契約される方法が一般的です。
本人と会社側人事担当者、関係部署管理者等との交渉を経て、本人の目標と業績をベースに年俸額が契約されます。
業績が低ければ、大幅な減額が求められたり、雇用が更新されないこともあります。

使用者側は、年功序列制による人件費の高騰を抑えることができます。
労働者側では、自分の実績が評価され、また、年間の給与に対する資金計画が立てやすいというメリットがあります。

マイナス評価を怖れて、達成しやすい低い目標に落ち着いてしまうことがあります。
内部の優秀な人材にやる気を与えることが目的だったとしても、逆に、年俸額が低くなった場合にモチベーションも低くなる可能性があります。
成果主義を基本とした年俸制は、職場がギスギスさせる弊害もあります。

使用者側は、業務に対する公正な評価と説得性、評価の運用の公正さが必要です。

目標設定と業績評価に関する公正な手続きと苦情の処理手続きについて、就業規則で制度化する必要があります。

就業規則を変更する場合には、賃金の決定、計算、支払方法等を明記しなければなりません。

年俸制を採用しても、残業代はかかります。ただし、管理監督者に該当する場合(労基法41条2)、裁量労働制(労基法38条3.4)等に関しては、時間外労働に対する割増料金は支払い義務はありません。
割増賃金の算定の基礎になるのは、
確定した年俸額全額です。
賞与も含めて、割増賃金の計算の基礎となります。
計算方法
年俸の総額 ÷ 1年間の総労働時間 = 1時間当たりの賃金
法定時間外労働時間(25%以上)、深夜(25%以上)、休日(35%以上)による割増賃金が必要になります。

残業を固定にする場合には、実際に労働した時間によって計算した割増賃金額が固定残業代を上回る場合には、差額を支払う必要があります。この場合には、通常の労働時間に対応する賃金と、割増賃金に対応する賃金とが区別できるようになっている必要があります。
シーエーアイ事件(東京地方裁判所判決 平成12年2月8日)
事件の概要
620万円の年俸制(月額365,000円)で裁量労働制による勤務形態でXはソフトウェアの研究開発業務に従事していました。
会社は、急速な財政状態の悪化に伴って就業規則の改定によって賃金(月165,000円)が大幅に減額した。
そのことから、Xは、
@ 未払い賃金
A 賞与の支払い
B 債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求等
を請求した。
結果は、@については、Xと会社は、期間を1年する雇用契約を交わしているのであり、このような合意が存在している以上、賃金規制の変更により契約の途中で賃金月額を一方的に引き下げることは、改定内容の合理性の有無に拘わらず認められないとして未払い賃金(平成9年8月分)の請求分を認め、またAの賞与について5か月分を、退職した原告の少なくとも契約期間中勤務した日数より按分した額の具体的支払い請求権を認めた。
Bについては、賃金規則の変更の必要性、内容の相当性を認定し、合意された賃金額を引き下げることは許されないが、新賃金規則の適用に応じること自体に違法性はないとして、損害賠償請求は棄却された。
参照法条 労基法11条
労基法24条1項
労基法89条1項2号
労基法93条
労働基準判例検索情報より抜粋
日本システム開発研究所事件(東京高裁判 平成20年4月9日)
事件の概要
調査・研究を受託する財団法人に勤務する研究者ら5名が、一方的に賃金の減額をされたとして、従前との差額の支払いを求めた控訴審である。